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夢で逢えたらほら,どんな言葉で君を抱き寄せる…
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「エス」第一部台本听写出炉,谨以此庆祝「エス 裂罅」DRAMA发售。

エス

原作:英田サキ
イラスト:奈良千春

CAST
椎葉昌紀:神谷浩史
宗近奎吾:小西克幸
篠塚英之:三木真一郎
安東隆也:杉田智和
Act.1 柴野 晃

椎葉:…もしもし。
宗近:寝ていたのか。もう夕方だぞ。
椎葉:誰だ……?
宗近:名乗ってもお前にはわからない。
椎葉:……どうしてここの番号を知っている?
宗近:安東に気をつけろ。
椎葉:なんだって?それはどういう意味——、おいっ?
椎葉:(一体誰だ?何故ここの番号を知っている?)
(宗近:安東に気をつけろ。)
椎葉:一体安東の何に気をつけろって言うんだ?(安東は俺のエスだ。知り合ってもう三年近く、強固な信頼関係もできる。安東を疑えば俺の足許がぐらつく。)まるでどこかのチンピラのだな。だがこれでいい。一旦この部屋を出れば、俺は椎葉昌紀という警察官じゃない。俺の名前は柴野晃!

俊樹:離せ!ちょっと蹴飛ばしただけじゃねぇか!
大迫:話は交番で聞くから、おとなしく俺についてこい!
俊樹:ちょっとマジ勘弁してよ、刑事さん。俺はさぁ、別に——あ、柴野さんっ!
椎葉:あれは安東のところの俊樹か。
大迫:柴野……?
椎葉:(気づかれたか。)どうしたんだ、俊樹。一体、何をやった?
俊樹:何もしてないっすよ。ちょっと看板蹴ったら、この刑事さんが器物破損だとかイチャモンつけてきて……
椎葉:あれ…大迫さんじゃないですか。お久しぶりです。偶然ですね。
俊樹:え?なに?柴野さん、知り合いなんすか?
大迫:久しぶりだな。元気そうで何よりだ。
椎葉:大迫さん。こいつは俺の知り合いなんですよ。どうか勘弁してやってはいただけませんか?この通りです。
大迫:わっかたよ。お前さんの顔に免じて、今回だけは大目に見てやる。次にやったら問答無用で現行犯逮捕だぞ。
俊樹:わかりましたよ。
椎葉:俊樹。社長に少し遅れると伝えてくれないか。
俊樹:はい、それじゃ。
椎葉:すみませんでした。
大迫:柴野さん、か。お前も大変だな。
椎葉:(大迫さんは警視庁の生活保安部にいた頃の同僚で、俺と同時期に銃器薬物対策課情報係に配属された。だが大迫さんは、半年ほどで配置換えを希望し、警視庁を去っていた。)
椎葉:仕事ですから。……大迫さん、今どこに?
大迫:ジュク署だ。古巣に戻れて清々してるよ。やっぱり俺に普通の捜査が向いてる。
大迫:お前は今は組対五課にいるのか?
椎葉:ねぇ……何とかやってます。
大迫:あんまり無理するなよ。
椎葉:はい。
椎葉:(警視庁組織犯罪対策部は、凶悪化、国際化がすみ、捜査が極めて困難になってきた、組織犯罪の取り締まりを強化すべく、平成十五年、警視庁に新設された組織だ。俺は五課に所属する銃器専門の情報捜査員で、裏社会でそれなりの立場がある人間を取り込み——エス、つまりスパイに仕立て上げ、有益な情報を入手する、エス工作と呼ばれる秘匿捜査を置くなっている。それまで犯罪者を取り締まっていた刑事が、捜査の対象としてきた人間たちと馴れ合わなければならない、大迫さんのようにまっすぐな正義感を持つ人間には、確かに向かない仕事だ。)
大迫:さっきのはお前のエスの身内か?
椎葉:そのようなものです。
大迫:お前のエスは歌舞伎町の住人ってことか。……何か困ったことがあったら、声をかけてくれ。できることがあったら協力させてもらうよ。
椎葉:ありがとうございます。それじゃ。

椎葉:(エレベータから出てきたのは、妙に迫力なある男だった。がっしりとした大柄な体に黒いカシミアのコート、彫りが深い男らしい風貌だが、瞳はひやりとするほど冷たく、引き締められた唇には不遜なものが感じられた。)
鹿目:社長、もうよろしいのですか?
宗近:ああ、待たせたな、鹿目。
鹿目:車はもう表に回してあります。
椎葉:あの男、なにものだ?

仁志:お疲れ様です。
椎葉:よ、仁志、遅くなって悪かったな。安東。
安東:いえ。それより、さっき俊樹が世話になったそうですね。すみませんでした。
椎葉:大したことじゃない。幸い知り合いの刑事だったしな。
椎葉:(俺のエス、安東隆也、表では歌舞伎町で風俗店とゲーム店を経営し、裏で覚醒剤などを密売などを手がかけて成功をさめる、若き実業家から。)
安東:どうぞ。
椎葉:ああ。(広域系暴力団、高仁会の傘下組織、松倉組の幹部でもある。といっても、商売の手腕を見込まれての幹部登用されたら、企業舎弟などで極道の下済みはない。)
安東:またですか……
椎葉:警視庁の組対と生安、それに入管の職員、合わせて五百人ほどが投入されるはずだ。(俺は、昔安東を世話になった恩人で、本業はフリーのルポライターということになっていた。)
安東:いつもすみません。助かります。仁志、今から各店舗を回って、店長たちに注意するよう指導してきてくれ。
仁志:わかりました。
椎葉:ところで、例の林英和って男、どうなった?
安東:それなんですが。どうやらチャカの売人には間違いないようです。こっちの懐具合を確かめてきたんで、試しに現ナマ見せてやったら、食いついてきました。
椎葉:こっちから取引は持ちかけてないだろうな。
安東:もちろんです。
椎葉:もう少し接触を繰り返して、できれば引き合わせてくれないか。
安東:わかりました。
椎葉:また来るよ。何かあったら連絡してくれ。
安東:はい。一斉取り締まりの情報、ありがとうございました。……髪、伸びましたね。
椎葉:……!
安東:すみません。
椎葉:……いや、そろそろ切らないとな。
安東:長いのも、よく似合いますよ。俺は今の髪型、好きです。
椎葉:そうか。じゃあ、もう少しこのままでいるよ。
(宗近:安東に気をつけろ。)
椎葉:なぁ、安東。いつもお前には感謝しているんだ。いろいろ大変だと思うが、これまで通り、俺に協力してくれるか?
安東:当たり前じゃないですか。俺は柴野さんのエスです。裏切ったり、逃げ出したりしていません。
椎葉:俺には、お前だけが頼りなんだよ。見送りはいい。(茶番劇だな。俺は安東の秘められた気持ちに気づいていた。気づいていて、必要とあらば、それだって利用する。柴野という顔を持つようになって二年以上、心の一部が、知らないに麻痺していくようだった。)


Act.2 安東

高崎:先日起きた発砲事件は、組織間の闘争に発展……
椎葉:(翌日の昼頃、俺は渋谷にとあるマンションに行った。組対五課、松田班のために特別に用意されたその部屋は、潜入捜査を行う捜査員たちを活動拠点だ。)
浅田:椎葉さん、ちょっといいですか。
椎葉:はい。なんでしょうか。浅田管理官。
浅田:昨日、篠塚参事官と食事をご一緒させていただいたんですけどね。椎葉さんのこと、気にかけておられましたよ。いつ電話しても繫がないと。
椎葉:お気遣い、恐れ入ります。早速今日にでも電話してみます。
浅田:それがいいですね。では高崎係長、行きましょうか。
高崎:はい。
椎葉:お疲れ様でした。
同僚A:身内に官僚がいると、いろいろ得だような。
同僚B:なぁ、椎葉、ひょっとして、お前だけ特別に捜査費を多くもらってるんじゃないのか。
同僚C:安東がよく働くのは、謝礼をがっぽりもらってるからか?
椎葉:お先に失礼します。
竹原:椎葉。
椎葉:竹さん、お疲れ様です。
竹原:さっきの、あんまり気にするな。みんなお前が毎回きっちり情報を持ってるから、ひがんでるんだよ。
椎葉:別に気にしてません。
竹原:そうか。ならいい。安東が接触している中国人の貿易商当たりだといいな。
椎葉:はい。俺も慎重に接近してみるつもりです。
竹原:なあ、椎葉。安東は優秀なエスだ。お前のためによく頑張ってる。だからお前も、安東の面倒はとことん見てやれよ。エスってのは、自分の女といっしょなんだからな。
椎葉:女、ですか?
竹原:そうだ。あいつらは自分が属する世界を敵に回しっても、俺たちに尽くしてくれる。お前可愛いとは思わんか?
椎葉:エスは大切なパートナーです。でもそれは、お互いの利害関係が一致した結果でしかない。それに、何か問題が起これば、上は簡単にエスを切れと言うでしょう。
竹原:だからビジネスライクな付き合いしかしたくないか。椎葉、これだけを覚えておけよ。エスを持つってことは、警察人生を賭けるってことだ。

椎葉:安東、お前何かあったのか?車ではやけに後ろを気にしていたし、店に入る前も落ち着きがなかった。
安東:最近、どうも、付けられているようなんです。
椎葉:なんだって?相手は?
安東:わかりません。
椎葉:まさか、麻取じゃないだろうな。なぁ、安東。もうヤクから手を引けろ。販売ルートを拾ってるのが惜しいなら、誰か下の者にでも譲って、マージンだけ取ればいいだろう。(麻薬取り締まるのは警察ではなく、厚生労働省の管轄下だ。安東を尾行しているのが麻取なら、面倒だった。)とりあえずブツは全部安全な場所に移動させて、しばらく売人に卸すな。いいか。
安東:わかりました。そうします。
椎葉:絶対だぞ。約束してくれ。もしも相手が麻取なら、お前を守ってやれなくなる。ところで、林英和と昨日、会ったんだろう?どうだった?
安東:明日からしばらく中国に帰国するそうです。柴野さんのことは、拳銃に興味のある友人がいると、紹介しておきました。それと、その時に拳銃を見せてもらったんですが、どうも奇妙で……
椎葉:奇妙?
安東:刻印のないトカレフだったんです。
椎葉:刻印がない?削ったんじゃなくて?
安東:ええ。最初から打たれていませんでした。それも、密造拳銃ではなく、真性の中国製トカレフだっと言ってました。大量に欲しいなら、相談にも乗ると。
椎葉:(どうなると、背後に大がかりな密売組織が存在するな。)林が日本に戻り次第、一度会わせてくれ。
安東:できれば、会わないほうがいいかもしれません。
椎葉:どうしてだ?
安東:頼まれて紹介した女の子が酷い目に遭わされたんです。注意したんですが、次は男を世話しろと……
椎葉:男?
安東:ええ。どうもあいつ、本当は女より男のほうが
好きみたいです。柴野さんのような人を見て、どう思うか……
椎葉:心配するな。お前も一緒なら大丈夫さ。香織さんの命日、もうすぐだな。墓参りには、俺も連れて行ってくれ。
安東:今年も、覚えていてくれたんですね。ありがとうございます。
椎葉:礼なんか言うなよ。当たり前のことだ。(香織さんは、三年前、元恋人のストーカに尾って殺されてしまった、安東の妹だ。香織さんが殺される前、ストーカ被害について相談されていたのが、当時刑事なったばかりの俺で、安東とはその時に知り合った。香織さんのことを思い出すと、今でも遣り切れない気持ちになる。)安東、ひとつ聞いてもいいか。
安東:なんですか。
椎葉:香織さんが亡くなった後、お前は俺に拳銃を不法所持している男の情報を持って来てくれたんだろう。どうしてだ?
安東:香織は言ってました。すごく頼もしい刑事さんが相談に乗ってくれてるって、本当に嬉しそうに。柴野さん、あいつが死んだとき、俺と一緒に泣いてくれた。俺も、柴野さんに会えて嬉しかったんです。それに、俺と柴野さんは、似たもの同士じゃありませんか。
椎葉:似たもの同士……
安東:はい。俺と同じで、柴野さんも両親を亡くしていて、残された、唯一の家族だったお姉さんまで殺されてしまった。きっと、椎葉さんと俺は、同じ痛みを持っている。
椎葉:……煙草が切れた。買ってくる。
安東:俺のを吸ってください。
椎葉:そうか、すまないな。……安東。
安東:そろそろ出ましょうか。

安東:宗近さんじゃないですか。これからお食事ですか?
宗近:ああ。鹿目にいい店があるって連れてこられてな。
安東:そうですか。鹿目さんもお疲れ様です。
椎葉:(あれは、前に安東の事務所の前ですれ違った男だ。)
鹿目:ご無沙汰しております。
安東:先日はわざわざ事務所まで来ていただいて、すみませんでした。
宗近:いいさ、何かあったら、いつでも相談して来い。
安東:はい。ありがとうございます。それじゃ。
宗近:安東に気をつけろ。
椎葉:(まさか……こいつがあの電話の男なのか?)
安東:柴野さん?どうかしましたか?
椎葉:いや……

椎葉:安東、さっきの男はどういう人間なんだ?
安東:宗近さんですか。あの人はうちの組の若頭補佐ですよ。
椎葉:(安東と同じ組に属するヤクザが、どうして俺にわけのわからない忠告押してくるんだ?)
安東:宗近さんは俺の高校の先輩で、昔はよく一緒につるんで馬鹿なことをやってるんだ。俺を松倉組に誘ってくれたのもあの人です。あの人は、先代組長の愛人の子供なんですよ。
椎葉:じゃあ、いずれ組を継ぐのか?
安東:いえ。今は先代の正妻の息子が組長を勤めてますから、宗近さんも企業舎弟ってしてて、その気はないです。ただ、今の組長はまだ若いし、おぼっちゃん育ちのわがままな人なので、内心では、宗近さんに組を引っ張っていってもらいたいと思っている組員は多いみたいです。
椎葉:あの男は好きじゃない。
安東:珍しいですね。柴野さんが人の好き嫌いを口にするなんて。
椎葉:そうか?
安東:ええ。俺は初めて聞きましたよ。


Act.3 キャリア

椎葉:何度も電話をいただいていたのに、連絡せずにすみませんでした。
篠塚:いいんだよ。毎日忙しいのはわかってる。
椎葉:(篠塚英之、亡くなった姉の夫で、36歳になるキャリア官僚だ。階級は警視正、現在は警視庁公安部の参事官のポストに就いている。)
篠塚:実は内示が出てね。今度、本庁に戻ることになった。
椎葉:本庁のどこですか?
篠塚:警備局の企画課だよ。理事官に就任することになっている。
椎葉:そうですか。また忙しくなりますね。
篠塚:公僕に暇なしだよ。でも、今日は私の話じゃなくて、君に言いたいことがあって、来てもらったんだ。昌紀、来年もう一度、国家公務員試験を受けてみないか。
椎葉:……それは
篠塚:七年前、君は警察庁に採用の内定を受けながら、捜査のできないキャリアではなく、警察官として現場で働きたいと言って入庁を辞退した。だが、もう十分じゃないのか?
椎葉:どういう意味でしょうか。
篠塚:君は優秀な人間だ。国家公務員試験もトップの成績で合格したし、警察学校も首席で卒業した。今も刑事としてきちんと成果を挙げている。だが、その能力は官僚として、組織を向かす方向に発揮されるべきものだ。警視庁を辞めて、勉強に専念してみないか、君なら、今から真剣に準備すれば、来年の試験には合格できるだろう。
椎葉:無理ですよ。それに、たとえ合格しても、警察庁に採用されるとは限らない。
篠塚:そのあたりは心配しなくていい。現場で捜査経験がある刑事がキャリアとして採用されるのは前代未聞だが、それもまた新しい試みで面白いと長官もおっしゃっていた。
椎葉:(長官?つまり、警察長官その人だ、二十七万人の警察職員のトップに立つ、雲の上の存在、そんな相手にまで、根回しができるなんで……)
篠塚:君だって、由佳里のことがなければ、今頃はキャリアとして頑張っていたはずだ。もうそろそろ元のコースに道を戻しみないか?年齢的にも、二十八歳の今が、ぎりぎりぐらいだ。
椎葉:少し考えさせてください。
篠塚:わかった。いい返事を期待してるよ。

篠塚:昌紀、また家にも遊びにおいで。いつでも歓迎するから。
椎葉:ありがとうございます。機会があれば寄らせてもらいます。
篠塚:君は由佳里と本当によく似ているな。
椎葉:え?
運転手:出しますよ。
椎葉:それじゃ。(篠塚さんを思う時、いつも胸の中で相反する感情がせめぎ合う。反発と憧れ、嫌悪と尊敬が、かつてはあの人に憧れ、警察庁への道を目指していた。だが、その気持ちは、姉の死にをで覆された。ある暴力団員の撃った流れ弾が、運悪く取り掛かった姉の頭を撃ち抜いたのだ。あれは妊娠五ヶ月で産婦人科からの帰り道だった。犯人はすぐに逮捕された。警察に自首してきたのだ。ところが、ある週刊誌に出頭してきた男は身代わりで、実際に発砲したのは組長の息子だという記事が掲載された。抗争を終結させたい警察側と、組長の息子を逮捕させたくない組の側とで、なんらかの裏取引があったのではないかという推論だった。俺は篠塚さんに姉のために再捜査を真実を探って欲しいと、頭を下げ続けた。けれど……)
(椎葉:どうしてですか。兄さんは警察官だのに、本当のことを知るために、どうして捜査してくれないんですか?
篠塚:昌紀、私たち本庁の人間は、警察機構に属してはいるが、あくまで行政官なんだ。警察庁職員個人に、捜査権はないんだよ。)
椎葉:(その後俺は、警察庁に入ることをやめ、犯罪を直接取り締まることのできる、ノンキャリアの道を選んだ。出世などいらない。犯罪が、姉の命を奪った拳銃が憎かった。その気持ちだけが、俺をここまで突き動かしてきた。)

椎葉:もしもし。
高崎:椎葉か?今どこだ?
椎葉:自宅に向かってるところです。高崎係長、何かありましたか?
高崎:大変だ。安東が死んだぞ。
椎葉:死んだって……どういうことですか?
高崎:殺しらしい。さっき捜査一課から連絡を受けた。安東と一緒にいた仁志という男の証言に言おうと、犯人は中国人かもしれないって話だ。
椎葉:中国人……
高崎:襲われた時、相手が中国語で何か喚いたそうだ。その後すぐ発砲受けたから、顔まではよくわからなかったらしい。 
椎葉:発砲って……安東は撃たれて死んだんですか?
高崎:ああ。頭部と胸部にほぼ即死状態だったということだ。
椎葉:(中国人に……拳銃……まさか……)
高崎:一課の方でお前に聞きたいことがあるそうだ。
今から新宿署で出てこられるか。
椎葉:わかりました。すぐ向かいます。

仁志:柴野さんっ!
椎葉:大丈夫か、仁志。大変だったな。
仁志:なんでこんなことに……あんなにいい人だったのに……っ
椎葉:(新宿署で一課の刑事に説明を終えた後、俺は仁志と連絡をおけ、安東の事務所に向かった。)
仁志:柴野さん、俺たち、これからどうすればいいんでしょうか?
椎葉:表の店はいいが、裏の仕事はしばらく全面的にストップしたほうがいい。警察が入り込んで捜査してくれるからな。
仁志:はい。松倉組の方にも、知らせたほうがいいんでしょうけど、俺、組のことはよくわからなくて、宗近という人しか知らないんですよ。
椎葉:宗近か。俺もこの間偶然会ったよ。あのヤクザ、ここに何度も来ているのか?
仁志:いえ、ほんの数回程度です。俺も挨拶するくらいでよく知らないですけど、社長とは古い知り合いのようでした。
宗近:そうだ。
椎葉:!
宗近:安東とは長い付き合いだったよ。お前、仁志って名前だったかな?
仁志:あ、はい。そうです。
宗近:組のほうには俺が知らせておいた。何か困ったことがあったら、組じゃなくて俺に直接相談しろ。俺がつかまらなきゃ、こっちの鹿目でもいい。悪いようにはしないから。
鹿目:どうぞ。連絡先です。
仁志:ありがとうございます。
宗近:安東の遺体は?
仁志:今、解剖のほうに……
宗近:切り刻まれてるのか。可哀想に。あいつが戻ってきたら知らせてくれ。邪魔した。
椎葉:待てよ!
宗近:言っただろう。安東には気をつけてやれって。人の忠告を無にしやがって。
椎葉:(あれは……そういう意味だったのか。)お前……、何を知っていうんだっ。安東は誰に狙われていた?誰に殺されたんだ?
宗近:それが人にものを聞く態度か?お前は常識を知らない世間知らずのお坊ちゃんだな。いや、小嬢ちゃんか?知りたいって言うなら教えてやってもいいが、情報ってのはタダじゃない。
椎葉:金か。いくら用意すればいいんだ?
宗近:金なんかいるか。お前だよ。
椎葉:何……?
宗近:お前をよこせって言ってんだ。澄ました顔してても、男を悦ばせる方法くらい知ってるんだろう?
椎葉:このゲス野郎……っ
宗近:その気になったら、いつでも俺の所に来い。
椎葉:お前、頭がおかしいんじゃないのか。

椎葉:留守電?
電話:一言です。
大迫:大迫だ。頼まれていた例の件だがな。うちのマル暴のデカから情報をもらった。宗近奎吾、三十二歳、表向きは不動産業に輸入業、IT関係の会社を経営している青年実業家。裏じゃ知ってる通り、松倉組若頭補佐って立場だ。先代組長の妾腹らしいが、認知は受けていない。高校卒業は本宅を出て、マル暴でも行方を掴めずにいたが、四年ほど前から突然実業家として、松倉組周辺に姿を現し始めた。そんなところだ。また何かわかったら、連絡してくれ。
椎葉:(捜査に進展がないまま、もう一週間。じっとなどしていられなかった。安東は誰に殺されたのか?エスとして動いていたせいなのか?焼け付くような焦燥感が胸元までせり上がってくる。だが、今その真実を握っているのはただ一人。あの宗近奎吾という男だけなのだ。)


Act.4 取り引き

椎葉:(俺は結局、宗近に会うことを決めた。仁志がもらった名刺に連絡を置いてると、一時間後、宗近の部下鹿目の運転する車が向かい来て、六本木の高級マンションにある、宗近の部屋に連れて来られた。)
宗近:何か飲むか?
椎葉:いらない。安東を殺したのは誰だ?教えろ。
宗近:人に何か聞く時は、お願いしますくらい言えよ。
椎葉:これはお願いじゃない。取引だ。
宗近:ほう?じゃあ俺にサービスする覚悟はできてるってことか。
椎葉:さっさと始めようじゃないか。
宗近:せっかちな奴だな。最初に言ってオフが、俺が楽しめなきゃ、取引は不成立。裸になって横たわってりゃいいなんて思うなよ。
椎葉:お前は、男が好きなのか?
宗近:いや。だがお前には興味がある。なにせ、あの堅物の安東が惚れた相手だからな。いつから安東の女になった?
椎葉:俺は安東の女じゃない。
宗近:嘘つけ。安東はお前に入れ込んでいた。
椎葉:嘘じゃない。安東とは何もなかった。それに俺はストレートだ、男と性的な関係を持ったことはない。
宗近:つまらん。もういい、やめた。帰れ。
椎葉:待てよ!取引はどうなる?
宗近:中止だ。素人の男相手じゃ、楽しめるわけがない。
椎葉:ふざけるな!お前が言いだした取引だぞ。絶対に応じてもらう。
宗近:わかった。とりあえず約束は守ろう。服を脱いで裸になれ、俺が見ている前で、一人で達けたら情報はくれてやるよ。制限時間は十分だぞ。さあ、始めろ。
椎葉:っ!
宗近:時間がなくなるぞ。いいのか?
椎葉:(くそ!)
宗近:なかなかいい身体をしているな。どうした?勃たないじゃないか。そんなんじゃ時間が過ぎていくだけだぞ。
椎葉:(こんな状況で早々簡単に立つかよ!)うるさい!黙ってろよ!
宗近:ひとつ協力してやろう。俺が言葉でお前を責めて。想像力を駆使して、自分を盛り上げてみろ。
椎葉:(もう三分以上過ぎて、このままじゃ、取引は不成立になる。仕方ない……か。)
宗近:想像してみろ。お前は本当は男が好きなんだ。心の中ではいつも男に抱かれたいと思っていた。そして、今やっと念願が叶った。男の手は、お前をゆっくり扱く。やがて男がお前のものを激しく舐め始めた。お前は気持ちよすぎて声が上げる。男の舌がさらに深い場所を求めてくれ。嫌だと言いながら、お前は震えるほど興奮している。男の熱いそれの押し当てられると、お前は従順に両足を大きく開き、受け入れる。お前は感極まって声を上げ続ける。感じる場所を容赦なく突き上げた。もう何も考えられない。「壊れるほど突き上げて欲しい」と男に叫ぶ。男のものを深く呑み込んで腰を振り続ける。そして次に、中にぶちまけられ、お前自身、熱い汁をまき散らす——
椎葉:……——っ!
宗近:九分四十二秒か。ちゃんと時間内にゴールできたな。大した集中力だ。馬宝森。安東を殺したのはそいつだ。
椎葉:ハッ!安東はどうしてこの男に殺されたんだ?
宗近:簡単に言えば、ヤクの密売に絡む怨恨ってところだな。安東は少し前に、覚醒剤の新しい買い付け先を手に入れた。北朝鮮製のブツで、当初、運搬はつき合いのある台湾マフィアに頼む予定だったが、折り合いがつかず、結局香港マフィアに任せることになった。そこからこうじれたんだ。
椎葉:……じゃあ、この馬という男は、台湾マフィアか?
宗近:ああ。
椎葉:安東は、自分の身の危険は知っていたのか?
宗近:まさか命まで狙われると思ってなかったみたいだな。安東と揉めた奴らが、竹聯幇系の組織だってことはわかっていたから、俺も本国にいる知り合いの竹聯幇幹部に相談したんだ。それで一旦は事が収まったかに見えたんだがな。馬も幹部だが、シャブ中で他の幹部連中からは嫌われて男だ。写真の裏に、奴が根城にしているアパートの住所が書いてある。この情報をどうするかはお前の勝手だ。好きにしろ。
椎葉:ああ、そうさせてもらう。
宗近:おい。なかなか面白い見物だった。現役の警察官のオナニーショーなんて、滅多に見られるもんじゃないからな。
椎葉:……安東に聞いたのか?
宗近:いや。俺が勝手に調べたんだよ。安東はお前の情報屋だったんだろう。餌もくれないケチな伺い主に、よく従順に尽くしていたもんだ。
椎葉:安東はゲスなお前とは違うからな。
宗近:お前だって同じようなもんだろう。あいつの気持ちを知った上で利用していたくせに。
椎葉:……!気をつけて帰れよ、椎葉刑事。

高崎:椎葉、馬が落ちたぞ。
椎葉:そうですか。早かったですね。
高崎:とにかく林が無関係でよかったよ。一課に持っていかれてはかなわんからな。
椎葉:(係長は安東殺害の犯人が逮捕されたことはなく、林英和に捜査の手が伸びなかったことを喜んでいた。そして俺もまた安東殺害の犯人がエス工作とは関係ない、台湾マフィアだったとして、ホッとしていた。安東の死という事実は、変わらないのに。)
高崎:ところで椎葉、お前、新しいエスを選定する必要があるだろう。
椎葉:……新しいエスですか?
高崎:そうだ。宗近奎吾はどうだ。
椎葉:……!やめてくださいよ。冗談じゃありません。
高崎:どうしてだ?あの男はお前が刑事だってことを知りながら、馬の情報を提供してきた。
椎葉:それは……
高崎:エスは完全にモノにするまでが、一番大変だが、自分から刑事に近づいてきた宗近なら、きっと短期間で取り込める。いいか、なんとしても奴を取り込め、これは命令だ。
椎葉:……はい。

椎葉:(命令が下って以上、動かざるを得なくなった俺は、まず宗近の尾行から始めた。だが、若頭補佐でありながら、暴力団関係者との交流はほとんどなく。尾行開始から十日が経過しても、特に変わった動きは見られなかった。このままでは、取り込み作業は進展しない。そうはわかっていても、あの男への直接的な接触は、どうしても気が進まなかった。)
(RRR…)
椎葉:(誰だ?見覚えのない番号だ。)
宗近:お前も飽きないな。いつまで俺を尾け回すつもりだ?
椎葉:(気づかれていたか。しかも携帯の番号まで知られてる。)
宗近:上がって来いよ。美味いコーヒーでも飲ませてやるぞ。じゃあな。

宗近:さて、どうして俺を尾行する?俺に惚れたのか?
椎葉:馬鹿か。俺が女だったとしても、お前にだけは惚れたりしない。寝言は寝てから言え。
宗近:きれいな顔をしてるくせに、口の悪い男だな。
椎葉:もっと言ってやろうか。お前は男の自慰行為を見て興奮する変態で、インポなんだろう?
宗近:なら、お前の身体で確認してみろか?
椎葉:帰る!
宗近:待て待て、冗談だよ。俺は素人男の尻を狙うほど不自由してない。まあ、お前が相手なら、少しは楽しめそうだがな。
椎葉:(どこまで本気で、どこまで冗談なんだか。)宗近、お前は俺を刑事だと知ってて、何故馬の情報を与えた?
宗近:やぶからぼうになんだよ。
椎葉:お前は本気で俺をどうにかしたいなんて思っちゃいないだろう。俺に変な取引を持ちかけたのも、情報を与えるための口実にすぎなかった。違うか?
宗近:どうしてそう思う。
椎葉:俺に馬の情報を教えれば、馬は当然警察に逮捕される。松倉組と関係のある台湾マフィアの人間には手を出せない。あれはお前なりの報復手段だった、そうなんだろう?
宗近:ちょっと違うな。確かに馬のことはどうにかしたいと思っていた。だが、ただパクらせたいだけなら、警察にタレコミの電話をかけりゃ済む話だ。俺が取引を持ちかけたのは、やっぱりお前自身に興味があったからさ。
椎葉:なあ、とにかく一応礼は言っておく。馬の情報を流してくれて助かった。ありがとう。
宗近:事実を知って楽になれたか。
椎葉:なんのことだ?
宗近:安東が自分のせいで死んだんじゃないとわかって、ホッとしたのかって聞いてるんだ。俺は最初、お前が安東の女だと思っていた。だから必死で犯人を知りたがっているんだろうと、けど、お前にとって安東はただの情報屋にすぎなかった。安東も哀れなもんだな。自分が死んでも、惚れた相手は泣いてもくれないとは。
椎葉:黙れっ!お前に何がわかるって言うんだ!何も知らないくせに!(確かに安東の死が自分のせいではないとしてホッとした、それは事実だ。だが、俺にとって安東がどういう存在だったが、そんなことまで勝手に決め付けるな!)
宗近:待てよ。まだ話は終わってない。
椎葉:お前と話すことなんて何もない!離せっ!
宗近:いい目だ。そういう顔を見たかった。
椎葉:やめ……っ
宗近:このまま抱いてやろうか?
椎葉:男には興味がなかったんじゃないのか?
宗近:言っただろう。お前は例外だ。
椎葉:(どうする?一度は覚悟した相手だ。仕事割り切れば、大抵のことは我慢できる。だが、この男を取り込むのに、果たしてセックスが有効な手段なのか?)
宗近:急に大人しくなったな。俺のキスはそんなにいいか?
椎葉:……ああ、よすぎて腰が砕けそうだ。
宗近:どうした?やけに素直じゃないか。気持ち悪いぞ。
椎葉:本当にすごく感じだんたからな。しょうがないだろう。男は初めてだけど、お前ならいい。
宗近:たいしたタマだな。椎葉、セックスで俺をモノにしようとしてるなら無駄だぞ。
椎葉:なんのことだ?
宗近:俺は安東とは違う。お前に撫で撫でされたくて、せっせと情報を運んでくるような健気な真似はしないぞ。
椎葉:(くそ!失敗だ!)
宗近:どうした?やらないのか。
椎葉:なんのとこにもならないのに、どうしてお前と寝なくちゃいけない?やり損だ。
宗近:やっぱり色仕掛けだったが。お前、自分の身体にそれだけの価値があると思ってるのか?
椎葉:やっぱりお前はインポの変態野郎だ!一生一人でオナッてろっ!
宗近:おい。やるよ。この部屋の鍵だ。
椎葉:なんのつもりだ?
宗近:用があるなら、いっせも直接来ればいい。
椎葉:女とお楽しみの最中に入ってこられてもいいのか?
宗近:ああ。構わないさ。その時は三人で楽しもうじゃないか。
椎葉:……!


Act.5 捜査

椎葉:(林英和が中国から日本に戻ってきた。俺はすぐに連絡を入れ、林が指定した新宿の高層ホテルにあるチャイニーズレストランで会うことになった。林は見た目はごく普通なのビジネスマンのようだったが、彼の話や、サンプルで見せられた拳銃からは、得体の知れない、彼の裏の顔が見え過去でしていた。そして一通りの話を上、ホテルのロビーまで降りた時、俺は厄介な人物と相聞してしまった。)
林:ああ、宗近さん!偶然ですね。
宗近:これはこれは、林社長じゃないですか。
椎葉:(しまった!まさかこんな所で……ここで林に刑事であることが知られてしまったら、すべてが台なしだ!)
林:こちらこそ。すっかりご無沙汰してしまって。また近いうち、一緒にお食事でも。
宗近:ええ、ぜひとも。では連れが待ってですので、失礼します。
椎葉:(助かった……)さっきの方はお仕事関係のお知り合いですか?
林:ええ。取引先の社長さんです。まだ若いのに、なかなかやり手なかったですよ。ああ、そうだ。柴野さん、これを。安東社長へのお土産にと思って、中国で買ってきた、翡翠の香炉なんですが、代わりにもらっていただけませんか。
椎葉:高価なものなんでしょう。私なんかには……
林:安東さんのお友達の柴野さんに、ぜひ受け取っていただきたいんです。お願いします。
椎葉:(あまり断ると心証が悪くなるか。)そうですか。では、お言葉に甘えて。
林:ありがとうございます。じゃあ、柴野さん、私はこれで。
椎葉:ええ、それではまた。

椎葉:おしもし。
宗近:今一人か?
椎葉:そうだ、なんの用だ。
宗近:俺に借りがひとつできたな。
椎葉:何が?
宗近:さっき俺が「やあ、椎葉刑事、今日も元気に捜査してるのか」って挨拶してたら、困ったことになったんだろう?
椎葉:くそったれ!
宗近:きれいな顔に似合わない言葉は使うなって。今の時に俺の家に来いよ。それで借りはちゃらにしてやるから。
椎葉:勝手に決めるな!

高崎:それでどうだった、椎葉?
椎葉:林の会社は民間を装っていますが、出資は100%中国政府らしいです。今回奴が持ってきた拳銃はすべて中国製で、七七式という、初めて見る拳銃がありました。中国の党の幹部や、公安警察が使うために開発された小型拳銃だそうです。
高崎:通常は海外に出回ることがない拳銃だな。奴はそんなもんどうやって日本に持ち込んでるんだ?
椎葉:領事館に知り合いがいって、外交官を運び屋にしてるようなことを匂わせていましたが。
高崎:外交官だと?奴は一体何者なんだ。
椎葉:係長、次の接触で、一丁を購入させてもらえませんか?
高崎:おとり捜査は駄目だ。もう少し時間を保たせろ。
椎葉:ですが……あまり買い渋っていると怪しまれます。
高崎:駄目だ。林のバックに領事館や政府関係者がいるとしたら、面倒なことになる。まず上に報告して判断を仰ぐから、いいか。それまでは絶対に勝手なことをするな。
椎葉:……はい。

椎葉:(今日は香織さんの命日だった。毎年、安東と一緒に墓参りに来ていたのに。その安東も今はここで眠っている。)
椎葉:安東……
椎葉:(悲しみに浸るのを先送りにして、ずっと捜査を続けてきたが、この場所に来たことで、ようやく俺は彼と正面から向き合えたような気がしていた。)
椎葉:じゃあな。……あれは、宗近?
宗近:飲めよ、安東。お前が好きだったバーボンだ。どうだ。美味いだろう。なあ、香織。お前の兄貴は本当に馬鹿だよな。こんなに早く逝っちまうので。本当に……どうしようもない馬鹿だ。
椎葉:(あんな宗近は見たくなかった。あんな……悲しそうで、寂しげな宗近は……)

椎葉:(十二月半ばに過ぎても、林の件は上からストップがかかったきり、まだ何の返事もなかった。俺以外は誰もが不思議なほど楽しそうに見える。疲れてるのかな。)
椎葉:あれは……篠塚さん?
母親:なっちゃん?
篠塚:ごめんね。おじさんがぶつかっちゃって。怪我はなかった?
母親:すみません、大丈夫でしたか?
篠塚:ええ、平気ですよ。
なっちゃん:クマちゃん……
篠塚:ああ、これか。ごめんね、クマちゃんも痛かったね。はい。
なっちゃん:これ、ママに買ってもらったの。クリスマスプレゼント。
篠塚:おお、よかったね。
母親:本当にすみませんでした。
篠塚:ああ、いえ。
なっちゃん:バイバイ。
篠塚:バイバイ。
椎葉:(篠塚さんは立ち去る親子を後姿をしばらくじっと見つめていた。姐さんのお腹の子が無事に生まれていれば、あの子ぐらいになっていたはずだ。身じろぎもしないトレンチコートの大きな肩が、頼りなく見えて、俺はたまらない気持ちになった。俺だけが辛かったわけじゃない。何も言わなかった分、もしかしたら、篠塚さんのほうが何倍も。しばらくして、篠塚さんは歩き始めた。柔和だが隙のない、いつもの篠塚参事官の顔をして。)

宗近:椎葉、来ていたのか。
椎葉:ああ、今さっきな。
宗近:そこのタオルとバスローブを取ってくれ。
椎葉:なあ、宗近。お前、エス工作って言葉を知ってるか?
宗近:公安がやってるあれか?監視対象の組織に内通者を作って、情報を流させるんだろう?
椎葉:ああ。俺たちは内通者のことをエスと呼んでいる。
宗近:つまり安東は、お前のエスだった。そういうことか。
椎葉:俺はお前を次のエスにしたい。宗近、俺のものになれよ。
宗近:俺に警察の犬になれってか。
椎葉:そうだ。飼い主はこの俺だ。餌ならちゃんとくれてやる。俺のものになったら、好きなだけ抱かせてやるよ。
宗近:本気で自分にそれだけの価値があると信じてるのか。
椎葉:価値を決めるのは俺じゃない。お前だろ?
宗近:俺はそんなに安くない。本気で俺が欲しいなら、心ごとよこせ。
椎葉:心ごと……?
宗近:鈍感な野郎だな。
椎葉:おい。今のはどういう意味だよ?
宗近:もういい。用件はそれだけか。
椎葉:聞きたいことはある。
宗近:何だ。
椎葉:林英和とはどういう関係だ。
宗近:林の会社とは取引している。それだけだ。
椎葉:やっぱり林の裏を知ってるんだな。あの男、一体何者なんだ。
宗近:おい、俺はまだお前のエスになったわけじゃないんだぞ。
椎葉:頼むよ。教えてくれ。林のことを教えてくれたのは、安東なんだ。あいつの最後の情報を無駄にはしたくない。
宗近:たく。色仕掛けの次は泣き落としか。林は本国に籍を持つ軍人だ。あいつの経営する貿易会社は表向き日本の精密機器を海外に輸出しているが、実際に扱っているのは中国の原油や武器弾薬だ。日本では書類操作だけで、荷は中国から直接海外へ、獲得した外貨はすべて国か軍部あたりに入ってるはずだ。
椎葉:お前、どうしてそんなに詳しいんだ?
宗近:知り合いのヤクザで林から何度かチャカを買ってる男から聞いたんだよ。そいつは向こうの武器製造工場見学させてもらったらしい。
椎葉:中国の武器輸出会社は全て国営だ。銃規制のある日本への輸出がばれれば、国際的な非難を受け。林のバックが政府か軍部なら、安易に日本へ拳銃を密輸するとは考えにくいんじゃないか。
宗近:さあな。林が日本でチャカを密売してる理由なんて、俺にはどうでもいい話だ。
椎葉:俺にはどうでもよくない。なんとしても林を捕まえたいんだよ。林だけじゃなく、その後ろにいる連中もだ。
宗近:やめとけ。相手がでかすぎる。上だって相手が中国の政府か軍部だってわかれば、手を引かざるを得なくなる。
椎葉:俺は手を引く気はない。だが、とにかく林の情報は助かったよ。ところで、これも借りになるのか。
宗近:当然だ。返してくれるのはいつでもいいが。利息くらい今払っていけよ。キスひとつで、利息はチャラにしてやる。
椎葉:安い利息だな。
宗近:どうかな。
椎葉:そういうのはよせ。
宗近:そういうのって?
椎葉:口が寂しいなら、飴玉でも舐めてろよ。
宗近:嫌だね。お前の唇のほうがずっと甘いのに。
椎葉:(このタラシめ!)おい……誰がそこまでしていいって言った……やめろ!……宗近、お前は俺をどう思っているんだ。本当は俺を憎んでいるんじゃないのか。
宗近:どうしてそう思う。
椎葉:お前は時々俺に酷く冷たい目に向けることがあるからだ。俺が、安東を守ってやれなかったからか?
宗近:別にお前を憎んでなんかいない。最も、最初の頃は無性に苛立って、お前を傷つけてやりたかったことは事実だ。
椎葉:俺の何に苛立っていたんだ?
宗近:お前はあいつを救えかなったことを悔やんでいた。まるで無能な俺自身の見ているような気分になったんだよ。お前が始めてここに来た夜は、安東をいいように利用してきたデカを、ちょっとおちょくってやろうというくらいの軽い気持ちだった。なのに、それが今じゃ……
椎葉:帰るよ。
宗近:おい。お前はとんでもなく臆病な猫だな。誰かに
手懐けられるのはそんなに怖いか?
椎葉:どういう意味だ?
宗近:わからないならいい。いいか、林にはこれ以上近づくんじゃないぞ。それがお前のためだ。
椎葉:おやすみ。


Act.6 エス

林:さあ、どうぞ。まずは一杯。
椎葉:(結局俺は林と二度目の接触に入る。指定されたホテルの部屋を訪れた。上からの許可は下りていない。だが、このまま手を引くわけにはいかなかった。)
林:おやおや、大丈夫ですか?
椎葉:これは何ですか、随分ときつい酒ですね。
林:茅台酒といいます。60度くらいあるので、馴れないと飲みにくいかもしれませんね。水割りにしましょう。
椎葉:林さん、この間のお話ですが、ぜひお願いできますか。
林:そうですか。
椎葉:ですが私が欲しいのは、刻印のないタイプです。以前安東から聞いたんですよ。私はマニアなので、変わったタイプのものに惹かれます。どうですか。
林:いいですよ。ご用意しましょう。
椎葉:刻印のないものは、一体どこで作られているんですか。
林:それは軍事機密なので、秘密です。でも中国には、たくさん兵器工場あります。もしよかったら、案内しますよ。
椎葉:それは面白そうですね。
林:柴野さん、私あなたのこと、とても気に入りました。今夜はゆっくりできますか。
椎葉:すみませんが、私はそっちの気はないんですよ。何でしたら、可愛い男の子がいるお店を紹介しましょうか。
林:私は、あなたが、いいんですよ。
椎葉:離してください。
林:大丈夫ですか。慣れないお酒で酔ったみたいですね。
椎葉:(おかしい。これはただの酔いじゃない。しまった!)酒に何か入れたんですか?こんな……卑劣な真似をするなら、あなたとは、取引しませんよ……
林:最初から取引などするつもりはないんでしょう?椎葉さん、あなたは刑事なんだから。あなたに差し上げた香炉に盗聴器を仕込んでおいたんですよ。上司に私の捜査を止められていましたね。命令に背くなんて、いけない人だ。

林:白い肌には、鞭の跡がよく似合います。そのプライドの高そうなきれいな顔が辱められて、歪む所を見たかった。もっと可愛がってあげますからね。その前に、この薬入れてあげましょう。よく効きますよ。興奮してどうしようもなくなります。しばらくしたら、中で溶け出して効果が出てきます。さあ、これも入れて。どうです、気持ちいいでしょう?そうそう、もっと腰を振って私を喜ばせてください。誰ですか。いいところなのに。何ですか。
鹿目:こちらに田中様がご宿泊していらっしゃると伺ってお邪魔したのですが。
林:はあ?何かの間違いでしょ。フロントに確……何だ?おいっ!
椎葉:お前、どうしてここに……
宗近:静かに。鹿目、外の様子は?
鹿目:大丈夫です。
宗近:シーツに来るんで運びやつ。じっとしろ。

椎葉:ここは?
宗近:俺の隠れ家だ。何の薬を盛られた?
椎葉:わからない。最初は酒と一緒に、体が動かなくなる薬を飲まされて、次は何か興奮剤みたいなものを……
宗近:いい様だな。自業自得だ。
椎葉:仕方がないだろう!俺は、安東のために、どうしても……
宗近:馬鹿か、お前は。何が安東のためだ?こんな無茶をして、あいつが喜ぶとでも思ってるのか?お前のはただの自己満足だ。色仕掛けしかできないなら、デカなんかやめちまえ!
椎葉:……お前に何がわかる。俺は一人で捜査してるんだ。多少の無茶くらいしなきゃ、情報なんて摑めないんだよ……っ!
宗近:泣くなよ。悪かった。ぶったことは謝る。ついカッとなっちまったんだ。お前があんな野郎に好き勝手されるのは、我慢ならないんだよ。自分を粗末に扱うな。お前はそんな安っぽい男じゃないはずだ。
椎葉:(この男と向き合っていると、心が乱される。それなのに、こうして広い胸に抱かされながら、甘い言葉を聞いていると、強い安心感が湧いてくるのは、何故なんだろう?)
宗近:薬が効いて、苦しいんだろう?
椎葉:……ああ。だから頼む、あんまり触らないでくれ。
宗近:できない相談だな。お前、今の自分がどんなにそそる顔をしてるのか、自分でわかってないのか?
椎葉:何を馬鹿な……よせっ……宗近!借りならまた別の機会に返してやるから、本当に今夜は勘弁してくれ……っ
宗近:俺は今夜がいいんだよ。観念しろよ。……椎葉、今お前を抱きたい。
椎葉:……やめっ
宗近:言えよ。抱いて欲しいって言えよ。自分から俺を誘ってみろ。言えたら、欲しいものはなんでも与えてやる。なんならお前のエスにだってなってやってもいい。
椎葉:(心が揺れなかったと言えば嘘になる。だが、こんな状態で宗近に屈服したくなかった。誰に抱かれることも、跪くことも、自分の意思で決めたことでなければならない。今の俺に残された、唯一のプライドだ。)
椎葉:無駄だ。抱いて何て言葉は、一生待っても聞けないぞ。
宗近:いい心構えだ。けど、どこまで保つかな。
椎葉:……っ!
宗近:言えよ。もうどうしようもないんだろう?一言欲しいと言えば楽になれる。椎葉、警察なんか辞めて、いっそ俺のところに来ないか。大事にしてやるぞ。
椎葉:……無理だ。俺はこの仕事を辞める気はない。
宗近:俺のものになるのは、そんなに嫌か。本当に強情な奴だ。後で鹿目がお前の服を持ってくる、しばらく待ってろ。
椎葉:宗近、どこに行くんだ?
宗近:俺はマンションのほうに帰る。敗者はおとなしく退散するよ。じゃあな、椎葉。結構、楽しかったよ。
椎葉:(駄目だ。このまま行かせてはいけない。まだこの男とは終われない。)待て、行くな。行かないでくれ、宗近。
宗近:どうしてだ。
椎葉:お前が欲しいからだ。誰よりも、お前が欲しい。
宗近:わけがわからん。
椎葉:うるさいっ。いいから、来いって。
宗近:これはどういうシチュエーションなんだ?
椎葉:俺はお前が捕まえた場面だ。俺のものになれ、宗近。
宗近:それは俺の台詞だろう。
椎葉:違う。俺がお前のものになるんじゃない。お前が俺のものになるんだ。
宗近:それほど俺が欲しいのか?
椎葉:欲しい。喉から手が出るほど欲しい。
宗近:お前が欲しいのはエスとしての俺なんだろう?
椎葉:エスは、俺の大事なパートナーだ。俺は何があっても、決してエスだけは裏切ったりしない。もしもエスの身に危険が及んだ時は、俺が守ってみせる。命がけで、全身全霊を傾けて。俺にとってエスとは、そういう存在だ。
宗近:なるほど。そこまで言われちゃあ、不足はないな。ところで、お前のものになったら、もう餌は食い放題なんだよな?

宗近:お前、先林の野郎におもちゃを使われたんだろう?どうだったんだ?気持ちよくて、癖になりそうだったか?
椎葉:そうだな。感じだよ。凄く気持ちよかった。けど、癖になるほどのもんじゃない。俺は、こっちのほうがいい。
宗近:たく。経験もないくせに、いうことだけは一人前だな。後で嫌だって言っても、聞いてやらないからな。何かで濡らしてやろうか。
椎葉:いい。まだ薬が残ってるようだから。
宗近:力抜いてろよ。
椎葉:……もっと……ちゃんと動け。
宗近:じっくり楽しませろよ。くそ、お前、よすぎるぞ。たまらん。このままだと、すぐ達っちまいそうだから。上になれ。
椎葉:どうすればいいんだ……
宗近:好きに動けばいい。
椎葉:……ん。お前も起きろ。下から見られると動きづらい。
宗近:たく。
椎葉:……ん、宗近。……ああ……っ
宗近:もっと激しくされたいのか?
椎葉:来てくれ……後ろからお前に責められたいんだ……
宗近:お前な……そんないやらしい言葉、口にするな。やり殺したくなる。
椎葉:宗近……駄目だ……たまらない……どうにかなる……っ
宗近:俺のほうが、どうにかなりそうだよ。これ以上、乱れるな。頭が沸騰する。
椎葉:ああ、達く……もう……あ……う……っ

椎葉:なあ、宗近。何故あのホテルにお前が現れたんだ?
宗近:そりゃお前の危険を察してだな。
椎葉:真面目に答えろよ。あれじゃあタイミングはよすぎだ。
宗近:タイミングよく現れたのは、あの部屋に盗聴器を仕掛けていたからだ。
椎葉:盗聴器?
宗近:ああ。林はいつもあの部屋でチャカの取引をしていたからな。俺は元々林を見張ってたんだ。あの男はかなり前からヤクザ相手にチャカを売りさばいていたんだが、やり口がどうにも汚くてな。上の命令で探ってた。実はな、あいつがやってる日本での武器輸出の操作と、チャカの密売とは全然関係ないんだ。
椎葉:何だって?
宗近:林は公務員見たいなもんだから、どれだけ外貨を稼いでも、わずかな給料しかもらえない。だからサイドビジネスに日本での密売に手を染めた。だが、手広くやりすぎたようだな。奴は本国からもマークさせてる。どっちにしても相手が悪い。
椎葉:もしかして今夜、林を取り押さえたのは、まずかったんじゃないのか?
宗近:どのみち、一度思い知らせてやる必要があったしな。相手を特定されるのは困るから、面が割れていない男たちに襲わせた。何、殺しちゃいない。少し懲りれば、無茶な商売もやめるだろう。いや、それよりも先に本国に送り返されて処分されるかもな。
椎葉:本国に……
宗近:椎葉。今回は相手が悪かったんだ。諦めろ。意地を張りすぎると、身を滅ぼすことになるぞ。
椎葉:わかってる。すぐ意地になるのは、俺の悪い癖なんだ。
宗近:ちょっと眠れよ。疲れただろう。
椎葉:そうさせてもらう。(ひと時の穏やかな時間だった。目が覚めれば、また走り出さなくてはならない。だから、今だけは何もかも忘れて眠りたい。背中に心地よい宗近の温もりを感じながら、俺はいつしか深い眠りへと落ちていった。)

椎葉:(林英和はあの夜以来姿を消した。中国に帰国したらしい、果たして本人の意思なのか、それとも本国に送還させたのか、今となっては、知る方法もない。だが、いつまでも林に拘ってる訳にはいかなかった。街を歩き、人と会って、どんどん情報を集めなければならない。今そこに拳銃があることを知らせる、血の流れる、新鮮な情報を……)
椎葉:もしもし。
篠塚:昌紀、私だ。今、君の後ろにいるんだが、声をかけても大丈夫だろうか?
椎葉:俺はいいんですけど、こんな格好ですから、立ち話すると、篠塚さんに迷惑が掛かりませんか。
篠塚:そんなことは気にしなくていい。すこし話をしないか?

篠塚:仕事中だったのか?
椎葉:はい。篠塚さんは?
篠塚:私は年明けに行われる都庁との合同テロ訓練を打ち合わせの帰りだよ。仕事のほうはどうだい?
椎葉:何とかやってます。篠塚さん、例のお話ですが……
篠塚:ああ。やっと返事を聞かせてくれるのかな。
椎葉:すいません。試験は受けられません。俺はこのまま、ずっと刑事の仕事を続けていきます。だから……
篠塚:そうか。君には君の考えがあるんだろう。残念だが、諦めることにするよ。
椎葉:いろいろと気にかけてくださって、ありがとうございました。本当に、感謝します。
篠塚:いいんだよ。由佳里と結婚した時、家族が二人増えたようで嬉しかった。由佳里と同じくらい、君を大事にしたいと思った。私は、今でも君を本当の家族のように思ってるんだ。どうか、そのことだけは、忘れないで欲しい。
椎葉:(俺は、この人に何も返せない。微笑みするも……)
篠塚:今夜はよく冷えるな。そろそろ駅のほうに戻ろうか。
椎葉:俺は、もう少しここにいます。先に帰ってください。
篠塚:そうか。じゃあ、このマフラーを使いなさい。風邪をひくといけないから。
椎葉:……でも。
篠塚:いいから。また一緒に食事でもしよう。それじゃ。
椎葉:兄さん……っ!マフラー、ありがとうございます。今度、美味い日本酒でも持って家に遊びに行きます。いいですか。
篠塚:ああ。もちろんだよ。いつでも待ってる。楽しみにしてるから。ありがとう、昌紀。

宗近:天下の往来で男といちゃつかな。
椎葉:何でここにいる?
宗近:近くでメシ食ってたんだよ。あいつはなんだ?まさかお前の新しいエス候補っていうんじゃないだろうな?
椎葉:そんなんじゃない。先のは義理の兄だ。姉の夫。
宗近:ほー。自分の姉の夫といちゃいちゃしてるのか。
椎葉:なんだよ?ヤキモチか。
宗近:餌。餌をよこせ。腹が減った。
椎葉:まだろくに仕事もしてないのに。厚かましくないか。
宗近:普段から愛情かけて育てないと、犬も言うこと聞かなくなるぞ。今から家に来い。
椎葉:嫌だよ。
宗近:来ないと女を連れ込むぞ。
椎葉:勝手に連れ込め。
宗近:あ、おい、待て。お前、そんなんじゃ、俺に逃げられるぞ。
椎葉:馬鹿言え。(何があっても逃がしたりするもんか。どんなに暴れても、きっちり手綱を握り、最後まで乗りこなしてやるよ。お前はもう俺のものだ。俺だけの、大事なエス。)
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